――こんな夢を見た。
目も醒めるような澄んだ青空に浮かぶ白い雲。
爽やかな晴天とは裏腹に、私はその空の下、これから処刑される。
叶うことなら永遠に逃れ続けたかったが、こうして軍に見つかった今は、
自分でも意外なくらい穏やかな気分だった。
気がかりなことといえば、残される家族のこと。
僅かながらの遺産は妹に渡ると良いのだが。
目に染みるような鮮やかな青は、綺麗すぎて、どこか胸を切なくさせる。
それでも、これほど見事な空の下、死に赴ける私は幸運なのかもしれない。
そんなことを思いながら、私は一歩また一歩と自分の足で、己の終焉へと向かうのだった。

――こんな夢を見た。
それは祖母の家の景色に似ていた。私はそれを横たわりながら眺めている。
一体、ここはどこなのだろう。いや、どうして私は横になっているのか。
目を開けているだけでも億劫なのはどうしてだろう。
すると、その疑問に答えるように、どこからともなく声が響く。
まだ目覚めるには早い、もう少し眠っていなさい、と。
ああ、そうだ。
何故だか分からないが、自分でもまだ起きるには早いことを知っていた。
ほら、目を開けているのもこんなに億劫ではないか。
そうして、私は再び目を閉じる。
次に目を開けた時、全身がひどく重く感じた。
思考通りに手足も滑らかには動いてくれない。
そして、私は思い出す。
私は長い長い眠りに就いていたことを。
まだ、馴染めてないのだ。100年かけて定着した、この新しい身体には。

――こんな夢を見た。
幼い私は両親に手を引かれ、笑いながら歩いている。
とりとめもないおしゃべりをして、不意に私は訊いた。
私の名前ってなんていうの、と。
「何を言ってるの?」母が不思議そうに笑う。
「おかしな子だね」と父も苦笑しながら私の名前を口にする。
それを聞いて安心する私。
そう、それが私の名前。どうしたのだろう。自分の名前が分からなくなるなんて。
何だか恥ずかしくて、照れ笑いする私。
けれども、もう一度、確かめるようにその名を心の中で繰り返す。
なぜなら、それは初めて聞く名前だったから。私の名前であるはずなのに。

***

ちょっと趣向を変えて、夏目漱石の『夢十夜』風に書いてみました。この本は10の夢が描かれた短編でして、これに倣って、私の見た夢を挙げてみようということで。

どうも私は眠りが浅いのか、夢を見ない日の方が珍しくて。そんな中で、これらは、まだそれなりに筋の通った(?)展開の夢でしたが、大抵、脈絡なく場面転換したり、ほんっと意味不明なワンダーランドでして(笑)起きてから理性的に考えると悪夢に近いブラックな状況のような…。
悪夢は悪夢でまた、ほんとに恐怖なのを別に見るのですが;

大抵は主観的に展開されるのですが、上記の夢もですけど、私でない人物になっていることもあって。そんなレム睡眠の森の中に彷徨い、ある意味、大冒険を繰り広げてばかりなので、目が覚めても疲労感が抜けてないことが多々あるんですよね。

夢を見るのは、脳がその日の記憶の整理をしているからという説もあるそうですが、その日見たTVや本なんかの影響で、謎の奇天烈ワールドに誘われるなら納得ですけど、そんな心当たりもない日の場合、一体、それはどこからヒントを得た世界なのでしょうね。
私の脳の働きが鈍くて(ひー;)、その日の記憶ではなく、遠い別の日のものがコマ切れにくっついて再構築されたものなのでしょうか。

それにしても、どうせなら、もっとこうハッピーなのとか、お得な気分になれるのとか、萌え活動に役立ちそうなのでも見られたらいいのに…。
と、いうことで、その無念さをここのネタにぶつけてみました(笑)

秋の夜長に皆様はどんな夢をご覧ですか?

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