ナンジャモンジャ 担当:ぬりかべ
2005年1月7日 正月明け早々、ユキワタシにまた、国際問題関係でからまれて、そのときに、ぬりかべが即興で話した大人の童話「ナンジャモンジャ」。もし、お時間があればお付き合い下さいな。
「ナンジャモンジャ」
あなたの家の庭から、物質「ナンジャモンジャ」が出てきたとしよう。ジャンジャン湧いて出て、庭には池のようなものが出来たとしよう。
なにより重要なことに、このナンジャモンジャは便利だとする。
どこをどうとは言えないが、とにかく便利。食べると不治の病が治るかもしれない。頭も良くなるかもしれない。鉄よりも固い合金をつくれるかもしれないし、永久に発電できる原料になるかもしれない。
とてもとても素晴らしいものだったので、あなたは喜んだ。これで幸せになれる、もしくは、あなたの大事な人を幸せにできる、と心の底から喜んだ。
しかし、問題があった。
ナンジャモンジャはあなたの家からしか出てこないのだ。まぁまぁの量は出てくるのだが、世界中の人に行き渡るほどは出てこなかった。
近所の人はお金を出してもいいから、少しでいいから頂戴よ、と言ってあなたの家にやって来る。あなたはこころよくタダで渡していたものの、次の日は隣町から、その次はまた隣町から、やってくる人の数がドンドン増えていって困ってしまう。
あなたは考えた末、やはりお金をもらうことにした。
やってくる人の数と湧いて出てくるナンジャモンジャの量を考えて、適当な料金をつけると、やってくる人も少なくなった。本当に欲しい人だけ、ナンジャモンジャを求めてやってくるようになった。大成功だった。
そうすると、やがて噂を聞きつけて、遠い遠い国から客人がやってきた。その人はニポンという名の外国人だった。
「どんなに高くてもいいです。全部売って下さい」
ニポンさんは礼儀正しくそう言った。ニポンさんは商人で、ナンジャモンジャをもっと遠い外国に持って行ったり、加工して使いやすいようにして、お金を儲けたいと思っているのだそうだった。
あなたは相当考えた末、半分を自分と近所の人達のために残して、残りの半分を高値でニポンさんに売ってしまうことにした。ニポンさんはそれで構わないと言い、ナンジャモンジャと引き換えに毎日キチンキチンとお金を払ってくれた。あなたは大金持ちになることができた。仲良くなったニポンさんが言うことには、ニポンさんは若い頃は乱暴者だったという。しかし、改心して仕事に励み立派な商人になったということだった。
しかし、また問題が起こる。
あなたの近所の人で、ナンジャモンジャを手に入れられなくなった人達があなたの悪口を言い始めたのだ。そればかりか、あなたの家に忍び込んでナンジャモンジャを盗んでいく人達も出てきた。困ったあなたは、ニポンさんからもらったお金を使って、ボディガードをたくさん雇うことにした。そして、そればかりではなく、近所の人が喜んでくれるように図書館を作ったり公園をつくったりしてあげた。そのうえ、病気で働けない人にはお金をあげ、仕事のない人には仕事をつくってあげた。そこまですると、近所の人達はあなたのことを本当に立派な人だと褒めちぎり、悪いことをしなくなった。
やっと、あなたは本当に幸せになったかに見えた。
しかし、そううまくはいかなかった。遠い遠い北の国からまた客人が来たのだ。あなたのボディガードよりはるかにたくさんの強そうな部下を連れてきたその客人は、名乗りもせずに、あなたに拳銃を突きつけて、ナンジャモンジャを全てよこせと言ってきた。
「ニポンだけにいい思いをさせなくていいだろう。おれたちにもナンジャモンジャをよこせ」
どうやら、ニポンさんが手広く世界中でナンジャモンジャを売りさばいたものだから、噂を聞きつけてやってきたらしい。あなたは仕方なく、今日湧き出てきたナンジャモンジャを全て渡した。しかし、北からの客人は1円も渡そうとしない。
「おれたちの国は貧乏で、子供は飢えて死んでいる。お前達は豊かだ、おれたちも豊かになりたい。命があっただけでもありがたいと思え」
悔しくて仕方ないあなたに、北の国からやってきた客人は、また来るからな、と言って去って行ってしまった。
しばらくして、ニポンさんが心配してあなたのところにやってきた。
大丈夫ですか、と言うニポンさんに、あなたはお願いした。
「ニポンさんの力で、あの盗賊みたいな奴をやっつけることはできませんか?」
残念ながらできない、二度と喧嘩をしたくないから、とニポンさんは言った。
あなたは、元はと言えばニポンさんがナンジャモンジャを有名にして、大儲けしようとしたことが原因なのに、と怒りを覚えた。ニポンさんは、そんなあなたを見て、ためいきをつきながら言った。
「分かりました。わたしは助けることはできませんが、いい知り合いを知っています。連れてきましょう」
ニポンさんが連れてきたのは、腕の太い凄い怖そうな大男だった。地を覆うほどのたくさんの部下を引き連れてやってきた。アメリン、という名の外国人だった。
あなたはこれで北からの客人が来ても大丈夫だと思って安心した。何よりこの人数を見れば、北からの客人も尻尾を巻いて去ってゆくだろうと思った。しかし、意外なことをアメリンは言った。
「待つのは不利だ」
あなたは、これだけの人数とこれだけの警備をしているのだから大丈夫じゃないですかと言ってみた。しかし、アメリンは首を横に振る。
「万が一ということがある。おれは部下達が何より可愛い。彼らに無駄死にはさせたくない。だから、先制攻撃をすることにしよう」
あなたが止めるまもなく、アメリンは部下達を引き連れて北の国に向かい、北の国の人達をこてんぱんにやっつけてしまった。こてんぱんにされた人のなかには、ナンジャモンジャを奪っていったこととは無関係の人達もいた。しかし、アメリンは容赦しなかった。誰彼かまわずやっつけて、ついにはあなたに拳銃を突きつけた首領を捕らえて、あなたのまえに連れてきてしまった。
「すいませんでした。どうか許して下さい」
北の国の首領は、深々と頭を下げる。それを見てあなたは、逆に気の毒そうに思ってしまった。
しかし、首領は頭を上げると泣きながらあなたに言った。
「でもおれたちの国は貧しいんです。仕方なかったんです。子供が飢えて死んでしまうんです。こんなことをしてしまった後で本当に不躾なお願いですが、よろしかったら、おれたちの国にナンジャモンジャを分けていただけませんでしょうか?」
あなたは驚いて、それはできないと言った。奪われこそしないが、それでは同じことではないか、と思った。
「いいじゃないか。くれてやれよ」
アメリンはぶっきらぼうに言う。
「3割ほどナンジャモンジャをくれてやれ。それで彼らは助かるんだから」
あなたは驚き、怒り、呆れてアメリンを見つめた。
「そして、悪いがそれだけじゃない。命をかけて戦った報酬として、ナンジャモンジャをさらにおれたちが3割もらわなければならない」
アメリンがその気になれば、今度はあなたの方がやっつけられてしまう。
あなたは何も言えなかった。
「そして、3割を適正な値段でニポンに売ってやれ」
そんな、とあなたは思った。そのとおりにすれば、あなたの手元に自由になるナンジャモンジャは1割しか残らないことになってしまう。
あなたは頭を抱えた。
ああ、何でこんなことになってしまったのだろう…。
――さて、物語はここでおしまい。
あなたは、登場人物のなかで誰が一番「悪い」と思う?
「ナンジャモンジャ」
あなたの家の庭から、物質「ナンジャモンジャ」が出てきたとしよう。ジャンジャン湧いて出て、庭には池のようなものが出来たとしよう。
なにより重要なことに、このナンジャモンジャは便利だとする。
どこをどうとは言えないが、とにかく便利。食べると不治の病が治るかもしれない。頭も良くなるかもしれない。鉄よりも固い合金をつくれるかもしれないし、永久に発電できる原料になるかもしれない。
とてもとても素晴らしいものだったので、あなたは喜んだ。これで幸せになれる、もしくは、あなたの大事な人を幸せにできる、と心の底から喜んだ。
しかし、問題があった。
ナンジャモンジャはあなたの家からしか出てこないのだ。まぁまぁの量は出てくるのだが、世界中の人に行き渡るほどは出てこなかった。
近所の人はお金を出してもいいから、少しでいいから頂戴よ、と言ってあなたの家にやって来る。あなたはこころよくタダで渡していたものの、次の日は隣町から、その次はまた隣町から、やってくる人の数がドンドン増えていって困ってしまう。
あなたは考えた末、やはりお金をもらうことにした。
やってくる人の数と湧いて出てくるナンジャモンジャの量を考えて、適当な料金をつけると、やってくる人も少なくなった。本当に欲しい人だけ、ナンジャモンジャを求めてやってくるようになった。大成功だった。
そうすると、やがて噂を聞きつけて、遠い遠い国から客人がやってきた。その人はニポンという名の外国人だった。
「どんなに高くてもいいです。全部売って下さい」
ニポンさんは礼儀正しくそう言った。ニポンさんは商人で、ナンジャモンジャをもっと遠い外国に持って行ったり、加工して使いやすいようにして、お金を儲けたいと思っているのだそうだった。
あなたは相当考えた末、半分を自分と近所の人達のために残して、残りの半分を高値でニポンさんに売ってしまうことにした。ニポンさんはそれで構わないと言い、ナンジャモンジャと引き換えに毎日キチンキチンとお金を払ってくれた。あなたは大金持ちになることができた。仲良くなったニポンさんが言うことには、ニポンさんは若い頃は乱暴者だったという。しかし、改心して仕事に励み立派な商人になったということだった。
しかし、また問題が起こる。
あなたの近所の人で、ナンジャモンジャを手に入れられなくなった人達があなたの悪口を言い始めたのだ。そればかりか、あなたの家に忍び込んでナンジャモンジャを盗んでいく人達も出てきた。困ったあなたは、ニポンさんからもらったお金を使って、ボディガードをたくさん雇うことにした。そして、そればかりではなく、近所の人が喜んでくれるように図書館を作ったり公園をつくったりしてあげた。そのうえ、病気で働けない人にはお金をあげ、仕事のない人には仕事をつくってあげた。そこまですると、近所の人達はあなたのことを本当に立派な人だと褒めちぎり、悪いことをしなくなった。
やっと、あなたは本当に幸せになったかに見えた。
しかし、そううまくはいかなかった。遠い遠い北の国からまた客人が来たのだ。あなたのボディガードよりはるかにたくさんの強そうな部下を連れてきたその客人は、名乗りもせずに、あなたに拳銃を突きつけて、ナンジャモンジャを全てよこせと言ってきた。
「ニポンだけにいい思いをさせなくていいだろう。おれたちにもナンジャモンジャをよこせ」
どうやら、ニポンさんが手広く世界中でナンジャモンジャを売りさばいたものだから、噂を聞きつけてやってきたらしい。あなたは仕方なく、今日湧き出てきたナンジャモンジャを全て渡した。しかし、北からの客人は1円も渡そうとしない。
「おれたちの国は貧乏で、子供は飢えて死んでいる。お前達は豊かだ、おれたちも豊かになりたい。命があっただけでもありがたいと思え」
悔しくて仕方ないあなたに、北の国からやってきた客人は、また来るからな、と言って去って行ってしまった。
しばらくして、ニポンさんが心配してあなたのところにやってきた。
大丈夫ですか、と言うニポンさんに、あなたはお願いした。
「ニポンさんの力で、あの盗賊みたいな奴をやっつけることはできませんか?」
残念ながらできない、二度と喧嘩をしたくないから、とニポンさんは言った。
あなたは、元はと言えばニポンさんがナンジャモンジャを有名にして、大儲けしようとしたことが原因なのに、と怒りを覚えた。ニポンさんは、そんなあなたを見て、ためいきをつきながら言った。
「分かりました。わたしは助けることはできませんが、いい知り合いを知っています。連れてきましょう」
ニポンさんが連れてきたのは、腕の太い凄い怖そうな大男だった。地を覆うほどのたくさんの部下を引き連れてやってきた。アメリン、という名の外国人だった。
あなたはこれで北からの客人が来ても大丈夫だと思って安心した。何よりこの人数を見れば、北からの客人も尻尾を巻いて去ってゆくだろうと思った。しかし、意外なことをアメリンは言った。
「待つのは不利だ」
あなたは、これだけの人数とこれだけの警備をしているのだから大丈夫じゃないですかと言ってみた。しかし、アメリンは首を横に振る。
「万が一ということがある。おれは部下達が何より可愛い。彼らに無駄死にはさせたくない。だから、先制攻撃をすることにしよう」
あなたが止めるまもなく、アメリンは部下達を引き連れて北の国に向かい、北の国の人達をこてんぱんにやっつけてしまった。こてんぱんにされた人のなかには、ナンジャモンジャを奪っていったこととは無関係の人達もいた。しかし、アメリンは容赦しなかった。誰彼かまわずやっつけて、ついにはあなたに拳銃を突きつけた首領を捕らえて、あなたのまえに連れてきてしまった。
「すいませんでした。どうか許して下さい」
北の国の首領は、深々と頭を下げる。それを見てあなたは、逆に気の毒そうに思ってしまった。
しかし、首領は頭を上げると泣きながらあなたに言った。
「でもおれたちの国は貧しいんです。仕方なかったんです。子供が飢えて死んでしまうんです。こんなことをしてしまった後で本当に不躾なお願いですが、よろしかったら、おれたちの国にナンジャモンジャを分けていただけませんでしょうか?」
あなたは驚いて、それはできないと言った。奪われこそしないが、それでは同じことではないか、と思った。
「いいじゃないか。くれてやれよ」
アメリンはぶっきらぼうに言う。
「3割ほどナンジャモンジャをくれてやれ。それで彼らは助かるんだから」
あなたは驚き、怒り、呆れてアメリンを見つめた。
「そして、悪いがそれだけじゃない。命をかけて戦った報酬として、ナンジャモンジャをさらにおれたちが3割もらわなければならない」
アメリンがその気になれば、今度はあなたの方がやっつけられてしまう。
あなたは何も言えなかった。
「そして、3割を適正な値段でニポンに売ってやれ」
そんな、とあなたは思った。そのとおりにすれば、あなたの手元に自由になるナンジャモンジャは1割しか残らないことになってしまう。
あなたは頭を抱えた。
ああ、何でこんなことになってしまったのだろう…。
――さて、物語はここでおしまい。
あなたは、登場人物のなかで誰が一番「悪い」と思う?
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