*
 * 「なんでいるのよ」
 * 「なんでとおっしゃられましてもねぇ」
 * 「轢かれてた人、だよね」
 * 「そうっす」
 *

ハンバーガーショップで働く社会人二年目の草野は、仕事帰りに轢き逃げ事件に遭遇したことから、その被害者の大学生、横井亮太の幽霊と寝起きをともにすることになる。
霊というには説得力が無さ過ぎる亮太の人懐っこさと調子の良さに影響されるうち、仕事に追われ「洗濯掃除寝る」でつぶれるだけの味気ない休日を送っていた草野の生活は一変する・・・

草野視点の三人称と幽霊亮太の一人称で進んでいくストーリーはするするするーと入ってきて、いつのまにか読めちゃったよという清涼飲料水のような読感。でも、決して軽くはないと思う。
轢き逃げ事件を目撃した草野や当事者の亮太より、先に読んでる方がどきどきしながら犯人推理をさせられてしまう伏線の配置がいい。

草野をはじめ登場人物はみんな普通の人よりちょっとずつ善人で、一生懸命。
幽霊の亮太は、主人公に仕事上のアドバイスをしたり、バイトの女子高生に惚れちゃったり、人助けならぬ他の幽霊助けもしちゃったりする。そして、最後まで死んだことに対する怒りを他にぶつけたりはしない。
あまり思い悩んだりしない軽いノリは現代っぽいけれど、底には優しや思いやりがちゃんとあるんだなぁとほっこりします。

現実にはこんなうまい話はないけど、だから本を読むのっていいと思わせてくれる作品です。

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