助け船 担当:もぞ

2006年9月24日
それは昼過ぎのうららかなる日。
けたたましく携帯の着信音が部屋中に鳴り響く。
「もしもし?」
一緒に毎晩勉強に励む友人Aは沈んだ声で切り出した。
「昨晩から、うん、今もなんだけど、落ち込んでて…ブルーっていうのかな…」
何となく想像がついてしまった私は黙っている。
「ほら、昨日、ぬりかべが色々意見を言ってきたじゃない? 恋愛のこととか…」
「うん」
Aは現在、妻子ある男と不倫中。
不倫を解消するため、手始めに合コンしたいと言った彼女に、ぬりかべが「Aが結婚というか恋愛できない根本的な理由」について考察しようと昨晩一席ぶったのだ。
いい人でありたいが普通の人ではありたくない彼女は、ぬりかべとの議論中に自己矛盾の罠にはまってしまい、なぜか「セフレさえいればいいのよ、セフレさえ」という爆弾発言をぶちかましてしまった。何となくシャレにならなくて、その場にいた誰もがこの発言をスルーしていたのだが…
「私、セキララにぬりかべと恋愛観を話したいわけじゃないの、分かるよね? セフレは言い過ぎたけど、恋愛なんて今は面倒だからしたくないの。ただ、男性との出会いが欲しいのよ、分かるよね?」
「うん」
「結婚とか恋愛に憧れてるんじゃないんだよ、分かるよね」
「うん」
まぁ何となく気持ちは分かるということで肯定し続けていたら本題に入られた。
「じゃあ、何で、ぬりかべにやり込められてる私に助け船を出してくれなかったのよ!」
「…助け船、ねぇ…」
少し遠い目をする私。
議論をちょっとだけ整理すると、
・結婚は妥協の産物で、結婚したことを喜ぶような女は本当は負け組である byA
・結婚は妥協の産物だが、妥協した人間が結婚できるわけじゃないよ byぬりかべ
・結婚は我慢しなくちゃならないことが多すぎる byA
・結婚は許し合うことの積み重ね。我慢するんじゃなくて許してあげるんだ byぬりかべ
そして、
・結局、これがダメあれがダメという思想で相手を選別するような人間が恋愛とか言ってもねぇ byぬりかべ
・別に、恋愛したいとか結婚したいとか言ってないじゃん、私は自分の足で楽しみながら歩いて生きたいの、人生を! byA
ということで、昨晩の議論は落ち着いた。
もはや結婚しちゃってる私としては「お前は妥協した負け組だ」と言うAの肩をどう持てば良いのだろう、という気持ちがあったりなかったり…
「助け船、出せないこともないけどさぁ…」
「私、すっごく落ち込んでるんだよ?」
「分かるよ、むかつくよね、いちいちごもっともで偉そうなこと言うもんね、ぬりかべは。でも、私が助け船出しても、助けられなかっただろう事は、Aだって良く分かってるでしょ?」
そうなのだ。
ノリノリで喋っている時のぬりかべは絶対に話題を方向転換しないし、その話はやめてくれと懇願しても簡単にはやめてくれない。
「私とぬりかべが険悪な喧嘩に突入してもいい、ってんなら助け船出すけどさ、その後のフォロー、Aに出来る?」
「そ、それは…」
「本来なら、Aが自分で『気分を害した、もう話したくない』って言わなくちゃいけないと思うんだよね。所詮第三者の私が何言っても通じないよ、ぬりかべさんには」
「私、いい人っぷりを発揮しちゃう人だから、そんなこと言えないよ」
「だったら…追及されるようなネタ、ぬりかべにふっちゃダメだよ。合コン行きたいとか言うならさ、まずは身辺整理が先だろうし、男を値踏みするような話しちゃダメだって」
「だって私、正直なんだもん」
「こういうときこそ、女の武器使って媚びたりごまかしたり泣いたりすりゃあいいんじゃん」
「ずるい女だと思われるのはイヤなのよ〜!」
「難しいな…」
思わず唸る。
今更何を取り繕おうというのか、それはよく分からないが、何かを取り繕いたくなる気持ちは分からないでもない。
「もう、ぬりかべに自分のことを正しく理解して貰うことは諦めるといいかもよ。それに、ある意味、Aがずるいのは真実なんだから、気にすることはないんだよ」
「………」
「その上で、ぬりかべが酷いこと言ったり、意地の悪い追及をしたりしたら、一緒になって噛み付いてあげるから、それで勘弁してちょうだい」
「…分かった」
「それにね、Aが悩んでいるほど、ぬりかべは考えてないし、昨日の議論そのものも、いい暇つぶしになったなぁくらいなものかもしれないよ」
「…それがまたむかつくのよね…でも、うん、もぞが私のこと分かってくれるならそれでいいよ。今度からはちゃんと泣くようにするわ」
すがすがしい声で電話は切れた。

夜、ぬりかべと話をした。
「今夜はAさん、勉強会来られないって」
「あはは、昨日もぞがAをイジメ過ぎたもんなー」
「いじめたのは私じゃなくて、あんたでしょーがっ、つか自覚あったんかいっ」
この男、確信犯でAを追いつめてるんだよな…標的にされると厳しいな…
「ほっといてあげなよ、彼女はちゃんと自分のこと分かってるんだよ、図星さされたり否定されたりすると心が苦しいんだよ」
とりあえず注進。
果たしてこの話題に終わりは来るのだろうか…

<最近の家事>
購入して6年目くらいの炊飯器が壊れてしまい、ただいまガス+鍋でお米を炊いてます。
ガスで炊飯、と言ったら土鍋なんでしょうけれど、せっかくなので、ルクルーゼで炊くことにしました。
お米を30分ほど浸水させてルクルーゼにほぼ同量の水とともに入れ、フタをして中火で沸騰させます。沸騰したら弱火で10分、火からおろして15分蒸らせばOK。
私はグルメじゃないので、違いがよくわからないんですが、美味しく食べられました。
なんか甘かったような気がします(おい)
二合炊いたときは程良い固さでしたが、四合炊いたときは柔らかかったですね。おこげが出来るので、香ばしいです。
色々あって、炊飯器の購入が一週間後くらいになりそうなので、まだまだガス炊飯生活が続きます。

<最近の育児>
大将(息子)はバナナが大好き。
そしてバナナを与えながら私の脳内で流れる音楽はズバリ「さっちゃん」――そう、さっちゃんはね、から始まる定番ソング。
知っているかい? 息子よ、さちこ(推定幼稚園小さい組さん)はね、バナナ、半分しか食べられないらしいよ?
なんで大将はバナナ一本、そのままかじりついて食べられちゃうのかなー、離乳食だってまだ中期だよねー、その食い意地は誰に似たのかなー(私らしい)

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