週刊ジャンプのなかで、すっかり限界に来ているのにも関わらず、明らかに無駄に頑張っているのは言うまでもなく「ワンピース」なんだけれど、そろそろこいつも限界が見えてきたなぁと溜息まじりに感じるのは、「ムヒョとロージーの魔法律探偵事務所」。

 魔法を魔法律と称し、現実の法曹世界と重ね合わせて独特の世界観を持った漫画だ。登場した当初は非常に斬新で新鮮だった。魔法律に基づき、執行人が、巨大な悪魔を呼び、勧善懲悪を行う。加えて──ド派手な登場と刑の執行。
「その手があったか」
 と思って感動したものだった。後は、世界観を熟成させるだけでいい。シティハンターでも銭形平次でも、探偵系の作品からしかるべきオマージュを続けていけば、それだけで名作ができあがるだろう、そう思っていたのだが。
 ところが、回を追うごとに重厚になるべき世界観がどんどん貧弱になっていった。

 魔法律については全く体系づけられることはなかった。魔法律協会についても詳しく語られることはなかった。また、この魔法律協会というのがくせ者で、正義ではなくどちらかというと悪の存在だった。まぁそれはそれでおもしろければいいのだが、敵対している悪と魔法律協会も悪で、じゃあどっちが対決すべき悪なの?という疑問がでてくることになるわけだが、しかし、我らが主人公ムヒョはヒッヒッヒッと笑うばかりで答えることはなくて(基本的にムヒョは性格が無く闘うだけの存在)、すると必然的にロージーが主人公化して、それらの説明責任を負うことになるわけだが、いかんせん軟弱すぎてストーリー展開についていけない(ロージーは魔法律もろくに扱えないため物語上の制約が多い、リアクションがワンパターン。そのためだろうか、ロージーは修行入りとなってしまった。なお、このロージーの修行は退職金を貰うための官僚の天下りみたいなもので、ものの3ヶ月程度で終了した)そうこうしているうちに、ムヒョの才能に嫉妬したという動機だけで最大のライバルになってしまった元クラスメイトが積極的な活動を開始、完全に作品の主軸に据えられた様子で、さらに作品の器の小ささを見せつけられる思いがしている──。

 そしてつい先日、決定的なことが起こった。
「実はあっしは人間ではなくて、イタチの妖怪だったんです」
 ──とサブキャラクラスが爆弾発言。しかし、正直、そんなことどうでもいいし、登場人物みんな妖怪みたいな絵柄だから、ちっとも心動かされることはなかった。だが、作者はこれでもかこれでもかとイタチの妖怪を繰り出してくる。多分、可愛いとでも思っているのだろう。しかし、所詮、イタチだ。正直、辟易した。そのへんで愛想が尽き、読む気力が失せてしまった。

 設定そのものはいまも秀逸だと思っている。
 魔法を、現実世界の法曹界とリンクさせるのは本当にいいアイデアだ。もっと体系化させて、そうまるで「ナニワ金融道」「ミナミの帝王」のような立ち回りを悪魔と召還した人間とで演じさせても面白いのではないだろうかと思った。
 以下のように。

 悪魔「おい、こらぁ。上がるでぇ」
 人間「あ、こりゃ。悪魔はん。今日は何のご用でっか」
 悪魔「すっとぼけたことを。今日が履行日やないか。魂よこせや、契約したやろうが」
 人間「なに言うてんねん。あんときの契約は無効でっせ」
 悪魔「な、なんやとぉ〜」
 人間「ほら、これを見てみぃ。サタン様がお作りになった悪魔法第1597条や」
 悪魔「か、貸してみぃ」
 人間「強迫に基づいて行った魂の譲渡契約は無効である、そう確かに書いておますな」
 悪魔「ぐぅ確かに。こ、このぉ。お前、どこで悪魔法なんか教えてもろたんや」
 人間「へぇ実はですな…」

 ──なんだか思ったより面白くなさそう。 

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